大学の先生にお話しを伺いました!

こんにちは!

今回は、大学の先生にZoomを使ってお話しを伺いました!

〖取材〗

大学の先生‐‐‐大

職業部員 ‐‐‐ 職

職:まず最初に、お仕事内容についてお話しいただいてもよろしいでしょうか。

大:大学教員としての仕事は主に3つあります。1つは研究です。2つ目に教育です。3つ目に学内業務です。研究から説明しますと、研究活動は主に自身またはグループで行った調査研究を学会で報告して、論文を書く事です。研究成果で社会に貢献するというのが一つの使命だと思います。私の場合、組織の人に話を聞きに行くインタビュー調査や働く人々の考えや傾向を読み取るためにアンケート調査といった手法がとられます。こういった調査は、相手の許可が得られないとできないので、関係づくりのために動くことも研究を行う上では重要です。

 2つ目に教育です。教育は概ねどこの大学さんもそうだと思いますが、学部であれば担当科目とゼミが中心になります。担当科目は大学の方針に従って決まります。そしてそれに沿った教員が採用され担当します。それからゼミですね。ゼミの場合は担当教員の専門性を活かして教員から見て研究に必要な知見を学生と対話しながら、教授していく場です。なので、教員によってゼミでやっている内容は十人十色だと思います。

3つ目に学内業務です。学内業務としては教員の皆さんはなんらかの委員会に所属しています。私は入試に関係する委員会に在籍していますが、受験生の出願から合格までの裏方をしています。機密の部分もありますが、もうすこし言えば、入試問題のチェック、入試のスケジューリング、合格判定に必要な資料の作成などです。大学組織の一員として所属している以上、研究や教育だけでは組織はうまく動きません。自身の研究や教育環境を整えるためにも皆さん活動しています。教員の皆さんは事務的な活動に対してそういう訓練を受けているわけでもなく、得手不得手もありますので喜んでやっている人は少ないかもしれませんが(笑)。

これら3本柱が主な仕事です。その他、所属している大学の特色でいえば地域の大学という点があります。その点について話しをすると、もう一つあるのは地域貢献ですかね。地域に貢献できる人材を育成する、地域の人々や会社と連携する、行政と連携する、などいろいろな形で地域活性化に取り組むというものです。例えば、学生と地域の企業と協働で活動して成果を上げれば教育+地域貢献の一つの形であると言えます。なぜ、こういうことをするのか。大学の存在意義が問われていると思います。大学を継続していくという意味では社会に必要とされる存在にならないと生き残れないという問題意識が一つの考えでしょうね。

職:大学内の事務についてお尋ねします。大学によって、教員がどこまで関わるかっていう事は変わるんですか。

大:いろいろな大学の組織運営を見てきたわけではないので、聞いた話程度ですが、大規模大学さんと小規模大学では、ちょっと違うかもしれないですね。小規模の大学ではわりと教員が主要イベント全てに関わっている印象があります。大規模だと教員と職員ともに人数が多いのでより組織が分権化して専門の業務が多いかもしれません。 

職:研究についてお伺いします。学会っていうのが、私も含めて、この記事を読んでいる人が結構分かりにくい、馴染みがないと思います。例えば一人の方が複数の学会に所属しておられたりもするんですか?

大:複数の学会に所属されていると思います。学会って何かっていうと研究サークルです。私が所属している社会科学系の学会は年に何回か自分達の研究報告をする場を作って、皆さんでその報告内容について議論します。大体の学会は全国大会、地方の部会、テーマを作っての部会開催など様々な形で行っていると思います。テーマ別であれば、例えば、若手セッション、若手が中心に報告して、先輩方に研究内容をもんでもらおうということをやります。基本的には報告の場として機能しています。学会では論文も発行していますので、そこに投稿し、掲載されれば業績になります。なので、自分の興味関心に近ければ複数の学会に所属します。

職:学会っていうのは、どうやって入るんですか。先生が元々教えてもらっていた指導教官の伝手とかそういう感じですか。

大:伝手といえばそうなんですが、基本は入会届のような書類があって必要事項を記載して2名か3名位から推薦人として記名してもらって提出し、学会内の審議で認められれば入会できます。学会自体は会費で運営されていて、学会員は皆会費を支払っています。基本的には皆さん自分の研究に近いところの学会に所属していると思います。

職:学会は会費で成り立っているんですか。

大:そうです。寄付とかもありますが、ほぼほぼ会費だと思います。

職:会費を払ってでもやっぱりそうやって参加したいっていう研究者が沢山いるって事なんですね。

大:そうしないと自分の研究を発表する場がなくなります。大学教員であれば最低でも1つは入っていると思います。また、最新の知識のアップデートもできますし、他の人がどのように自分の研究をみているのかわかります。学会で出てくるのは、最新の研究ですので、新しい知識とか知見が得られるわけです。研究者の皆さんはそもそも研究活動が好きだからこういった仕事をしているわけで、報告を聞いたり、議論する場に参加するのは当然ともいえます。

職:分かりました。ありがとうございます。教育についてもお話しを伺いたいです。地域貢献というお話しがありましたが、ゼミでは具体的にどのような活動をされていますか。

大:最近ゼミでやっているのは、ここ2~3年は企業の人と共同プロジェクト的な事をしています。企業からもらった課題や協力してほしい事に対して、学生が自分のゼミや授業で習った知識を活用して課題解決していくっていうスタイルでやっています。主にアンケートの手法を教える意味で、組織の方に協力していただいて、実際にアンケートを取って分析しました。学生と組織の人を交えながら話し合いして仮説を設定して、質問票を作って、プレテストをして、結果をチェックして、実際に本調査を行って、集計して、分析して、考察して、報告して、企業の人からコメントをもらって…という流れですかね。しんどいこともありますが、一連の調査プロセスはチームで協力したり、分担したり、チェックし合ったりして完成させていくので、調査の実体験、知識の獲得、チームの管理という面では教育効果があるのかなと思っています。

一方、このような活動に協力してもらう企業の人にとって何の意味があるのか。私見ですが、こういった団体や組織の中には日々の業務に追われて、やらなければいけないことがなかなかできないということがあります。例えば、広報活動や、お客さんの分析とか、従業員のやる気の向上とか、顕在化していない組織内の課題の洗い出し、とかです。そういったところを学生と協力して分析してみて新しい視点の提供とか、意外な結果とか出ると、結構企業の方も喜んでくれます。そういった意味では、組織の助けとか貢献になっているところはありますし、実際にそういったコメントはもらったことがあります。ただ、学生をメインに、専門外の課題も出てくるので、どうしても拙いとか、中々上手くいかないとかがあります。そこら辺は理解の上協力してもらっているというところです。

職:企業の方とそうやって協力するっていう時に、素朴にどうして企業の方は協力しようと思ったんだろうなっていうのが、すごく疑問に思っていました。そうやって、受け入れ側にもメリットがあるって事なんですね。

大:そこを意識しないと協力関係が構築できないかなと考えています。つまり、やらせてくれってお願いしても、組織に対する何らかのメリットは必要だと思います。もちろん社会貢献的な意味で協力してくれる組織もあります。ギブアンドテイク的な関係までは言い過ぎかもしれませんが、協力してくださる以上研究の成果を報告したり、提供したりして何らかの貢献は必要だと思います。その組織に金銭的負担がないとしても、携わった人は自分の時間や、組織内の調整等、影響は受けています。これは研究でも同様です。

職:分かりました。ありがとうございます。続いて、お仕事の大変さについて、苦労される事とか、つらいなと思われる事等、何かありましたらお話しいただけますか。

大:仕事の大変さについてお答えしますと、研究というのは自分で選んだ道ですので、そこは気ままに見えてプレッシャーですね。学会報告、論文投稿、講演会など、締め切りが差し迫る中ネタを考えたり、アイディア作ったり、文章作るっていうのは、しんどい部分は確かにあります。報告すれば他の人から批判も晒されます。ただそこを乗り越えて認められた時が一番の達成感だと思います。

職:自分の選んだ研究っていう道だからということでしょうか。

大:研究者は自分の発想を持って自由に研究していいよっていう立場です。自分がやる研究に対して、あまり言い訳は出来ない。例えば、業務としてやるとか、上司に押し付けられたから、会社としてやらなければいけないから興味ないけどとりあえずやったとか、このような組織のためにではなく、自分のためにやります。結局自分がなんでこれをしたいのか、そういうところを突き詰めてやっておかないといけません。自分なりの問題意識なりなんなりを持っておかないと、研究途中でぶれてしまいます。私もよくぶれたり悩みますが、そこは常に引き締めておかないといけないですね。

職:研究の目的とかを、毎回考えたりするのとかも結構大変なんですか。

大:常にネタを収集して拾っておかないといけませんね。ニュースにしても、これってじゃあ自分の研究でいうとどのように関係するのかとか、自分の知っていることとなんか矛盾するなあとか、そういう気付きを得るようにしておくことが必要だと思います。たぶんほとんどの人はいくつか研究のネタっぽいもの、種はあります。それをどう育てようかというところは難しいですが、形にしようという意思があればどうにか形になります。形になってもこうやっておけばよかったっていう心残りみたいなものは常につきまといますが。

職:分かりました。ありがとうございます。教育とか大学の事務的な事でも、何かそういった大変な事がありましたら。

大:教育面で苦労については学生に自分の思いが伝わらず、主体的に動いてもらえないというのが一番大きいでしょうね。ただ、それは自分が悪いのかもしれません。伝え方が悪いのか、準備が悪いのか、配慮が行き届いてないのか、タイミングが悪いのか、いろいろ要因はあると思います。自分でコントロールできる部分は反省するところかなと思います。結局最後に動くのは学生自身の情熱がないといけないとは思いますが、つまるところ情熱をどうやれば引き出せるのか、ということを考えています。学生の研究に関しては私と違う分野でもいいです。分野が違う人から見ても面白く見えるというのは魅力的な研究テーマでしょう。

特にゼミは主体的な学びに向き合う必要が在りますが、例えば4年生でもテーマにずっと悩んでいるわけです。どうしたいのって尋ねても、本人にも答えが無い場合があります。人によっては、どういう卒論なら単位取れますかっていう質問してくる方もいます。独自性があって、結論の導き方が妥当で…一言でいえば面白い卒論ですと答えますが。もちろん、評価基準は示していますが、その基準は出席日数とかそういうものではないです。結局ゼミでやっている事は、学生本人のやりたい事のサポートです。もちろん、私がやれる範囲に限界はあります。それでも研究を楽しんでほしいです。研究への向き合い方が物事への向き合い方に繋がっているとおもいますから、その経験は無駄になりません。私は、ゼミ生は知識が足りなくとも、研究のパートナーみたいなものだとおもっています。そういう態度で接していますが、本人達は全然そういう気じゃないでしょうね(笑)。

学生本人がやりたくても悩んでいる時は良い傾向だと思います。自分で悩んで考えて動いているからです。それに対していろいろ私もリアクションできます。結果として徐々に自分で動いて、そこから何か学びに結びついていくと研究が進んで一安心ですね。

職:分かりました。お話しを聞いていると、かなり先生にとってゼミっていうのが大きな存在なのかなって感じました。

大:ゼミは裁量が大きいですし、授業よりかかわる時間が多いっていうのもありますけどね。ゼミは1年からあってそれは所属している大学の特徴だと思います。もちろん、授業でも企業さんの協力を受けられる機会があり、学生にもやれそうであればゼミでやるような調査もします。企業さんにメールで5、6回以上やり取りして、確認して、アンケート取って、データ分析して報告してっていうのを、年末年始やっていた事もありました。

職:ありがとうございます。続いて、楽しさとかやりがいについてお伺いできますか。

大:1つは先ほども触れましたが、人から認めてもらう事でしょうね。学会はサークル的な雰囲気もあるので、人の反応がわりとダイレクトにわかります。そういった中で色々評価とかお褒めの言葉をいただくと嬉しいものです。批判をされたときはへこむこともありますが、もっともな内容であれば新たな視点を得られたと思って儲けものと考えながら、次に続けようという気持ちでやっています。そこら辺が一つのやりがいかなというところですね。

この仕事って決められた時間働くというよりも、結局、自分で鼓舞して自分で成果あげるのがやらなきゃいけない事です。そうなると、成果っていうのは、世の中に発表したものであって、他人から共感を得たり、使ってもらったりという事が大きいですね。やる気の中にお金はありますが、正直言うと大手の会社に勤めた方が給料はいいと思います。私の高校の同級生のボーナスの話とか聞きますが、地域差はあるにしてもだいぶ違う印象です。なので、結局この仕事の良いところは、ある程度自分の裁量で動ける範囲が大きく、その分自分の評価がダイレクトに残る。つまり、仕事の成果として大きいのは自分の名前が残る事ですね。自身の名前で検索すれば論文とかも出てきますし、論文や書籍として名前が残るっていう仕事は、あまりないと思います。

教育は自分のゼミのOBが活躍したり、感謝されたら嬉しいですね。あとは在学中の学生からコメントをもらったり、授業でわりとややこしい事言ったかもしれないなっていう時に、学生が深く考え疑問を指摘し、興味を持ったって聞くと、やりがいも出てきます。

職:分かりました。ありがとうございます。では、最後に、中高生をはじめとした若い人達への何かメッセージをいただけますか。

大:このインタビューの目的っていうのは、仕事を知ってもらうっていうテーマでしたので、大学教員にもし興味を持った方に向けて答えます。ビジネス系の分野の範囲で述べますが、もしこの分野で大学教員を目指すのであれば若手も少なくなっていますし、興味があり勉強したい方は研究者という生き方もありかと思います。その分20代は自分の勉強をひたすらやる感じになりますし、焦ることもあります。英語で授業しなさいとか、国際学会で論文何本出したとか、働ける場所を選べないとかいろいろ条件が課される可能性はあるので、大変な面もあります。この分野、社会人を経験してから来る人が割と多いです。実務家教員と言いますが、3年、5年と民間企業で働いてキャリアアップ目的で修士課程に進学して、そこから興味持って博士課程に進学したという方もいます。働き出してからもチャレンジ出来る機会はあります。

〖職業部員の感想〗

 今回は大学教員の方にお話しを伺い、大きく分けて研究-教育-学内業務の3つの仕事をされているという事が分かりました。

 教育と学内業務はなんとなく分かるけれど、研究は馴染みがなく何をしているのか知らない、という方が多いのではないでしょうか。私もその一人であり、初めて聞く事が多かったです。例えば、推薦がいるという事も知りませんでした。そもそも、これまで学会について考える機会もありませんでした。会費を払ってでも発表したり知識を入れたりする場がほしいという事は、よっぽどその分野に関心があるのだろうなと思います。また、複数の学会に入っているという話しも印象的でした。自分の興味に沿って団体に入るという意味で、「サークル」という言葉は言い得て妙だと感じました。また、自分が選んだからこそ言い訳がきかない、他の人から批判にも晒されるというつらさも、なるほどなと、思います。自由に表現活動が出来るという事は、その分負う責任も大きいという事でしょう。歳をとってから、他で経験を積んでから研究者になるという人もいるという話しもありました。若い時に選ばなくても何かのきっかけで研究者になる事もあるのだと考えると、意外と身近な職業かもしれませんね。

 教育は、まさに人相手だなという印象を受けました。授業とゼミという二つの担当を挙げられました。ゼミでは企業調査をされており、ギブアンドテイクの関係を意識しているという話しは、職業部で取材をしている私にとっては、興味深い事です。どうすれば自分だけでなく、協力してくれる相手にも得をもたらす事が出来るのか、中々難しい問題だと思います。調べた結果を報告する事で、学生の成長にも企業の情報にもなるという仕組みは、上手いなあと感じました。また、どうすれば自分の言いたい事が伝えられるのか、何をしたいか分からない学生のエンジンをかけられるのはどの瞬間なのか、一緒に悩む事はまさに親心から来るのだと思います。親身になって考えてくれる先生を、学生は信用するのではないでしょうか。

 大学の事務は、喜んでやっている人はあまりいないかもしれないという、本音を語っていただきました。組織に属している以上、義務としてやっている。小さな大学であれば、職員がする事を教員がやっていたりもするのでしょう。ただ、そうやって学校の業務に関わる事で、様々な事を知ったり、学内の他の人と交流する機会にもなっているのではないかと思いました。また、大学によって色が異なるというのも面白い話しでした。

 ありがとうございました!!

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